いつのまにやら入院生活は3ヵ月を越え、家を空けている間に
私たちがこの家で過ごせる時間も、残りひと月を切ってしまった。
夏にはベランダからほうぼうの花火が見え、秋には下をだんじりが通り、
にぎやかなお囃子が風に乗って聞こえてくるベランダ。
古くても一風変わったのがいい、と探し回って見つけた部屋も、
昭和レトロなディティールがなかなか気に入っていた。
近所にはお嬢とベビーカーで散歩する公園、ちっちゃなお地蔵さん。
ちょっと歩けば美味しいパン屋さんやいくつものパティスリー。
階下の人に怒られないように、ベランダでこっそり花火をしたなぁとか、
お嬢を連れて公園のお祭りに行ったなぁとか、
隣の美容院の玄関にいつもいる白猫とか、
思い起こせば起こすほど、離れがたくなってしまう。
もうすぐピカピカの新居に越せるのに、この寂しさはなんだろう。
多分この部屋とのお別れが、まだ微かに残っていた私たちの
『青春』的時間の終わりを思わせるからかもしれない。
もう少し、もう少し居たいな。
12月の切なさが、今年はひときわ強く身にせまってくる。